多くの生物はペニスによって交尾をして,子を産む.
しかし,クモにはペニスがない.
ペニスなしでいかに生殖をするのか,非常に興味深い.
①クモのオスは「手」でメスを孕ませる.
人間の生殖器は下腹部に位置するが,オスのクモの生殖器は「手」に位置する.
そのため,クモの性行為は「交尾」ではなく「交接」と呼ばれる.
手と言っても第2付属肢の触肢という器官がオスの生殖器に相当する.
クモは脱皮の回数を重ねるとオスは触肢の先端が膨らんでくる.
この先端は,ラッキョウのような「生殖球」と,それに付属する「移精針(いせいしん)/栓子(せんし)」から成る.
これらは形と機能がピペットと似ており,ゴム風船の部分が「生殖球」に相当し,スポイト先端の細い管が「移精針」に相当する.
オスは梯子のような形の小さい「精網」を張り,(胃外溝の中央部にある)総輸精管の開口部から精網上に射精する.
精網上の精子を移精針で吸い上げ,生殖球の中に貯蔵する(ここまでは単なるオ〇ニー).
そこからオスはメスのもとに向かい,メスの腹部の書肺気門の間に位置する交尾口に移精針を挿入し,精液をメスの体内に注入する.
メスの交尾口は腹部内部の卵巣に繋がっており,ここで体内受精が行われる.
②クモのメスの生殖器は「単性域類」と「完性域類」で異なる.
クモはメスの生殖器官の構造により,単性域類と完性域類に分けられる.
単性域類のメスでは,触肢が挿入される交尾口と産卵口が同一である.
一方,完性域類のメスでは交尾口と産卵口が分離されている.
具体的には,メスの腹部の産卵口の前が硬化した板(外雌器)を形成し,そこに1対の交尾口が開口している.
交尾口は受精嚢に繋がっており,挿入された触肢由来の精子は交尾口から受精嚢に入り,その後に卵と受精してから産卵口から受精卵が吐き出される.
クモのメスは,受け取った精子を貯めて使う.
メスの生殖孔の奥には受精嚢があり,オスから受け取った精子を入れて長く生かしておけるのだ.
産卵の準備が整うまでは受精嚢に蓄え,整ったら使用する.
そのため,蜘蛛は人間のように子作りの度に性行為をしなくて済む.
一度交接すればオスとメスが同居せず済むのだ.
夫婦愛・親子愛など存在せず,孤独を好む.これこそが一般的なクモの姿なのだ.