白汐黎の考える研究の愉しさ

こんにちは,企画者の白汐黎です.

現在は研究が大好きな私ですが,嘗ては研究があまり好きではありませんでした.

それは,研究室に配属される前の私は研究のことを「学生実験のようななにか」と理解していたからです.

学生実験では,少ない共用試薬を6人で分け合い,作業も分担のために一人1~2工程しかできませんでした.

特に仲の良い訳でもない人たちに話を合わせながら,言われたことだけをやらされる時間は非常に苦痛でした.

そのため,愉しさを全く感じられず,研究室に配属された後の生活を不安に思っていました.

しかし研究室に配属され,研究とは学生実験と全く異なるものであることを知りました.

〇研究とは常に「己が精神との闘い」

まず,研究室に配属されて驚いたことは,研究とは基本的に一人でするものであると知ったことです.

配属された当初は,自ら大して考えることもせず,先輩から受けたアドバイスに従って実験をしていただけでした.

しかし,相談回数を重ねたある時に以下のように注意をされました.

先輩に相談することも必要だが,まずは自分の力で文献調査を行い,よく考えてから相談してほしい」と.

初めは先輩に呆れられたのかと思いましたが,後には私の今後のことを考えての発言と気が付きました.

この時以来,人に相談をする前には徹底的に文献調査を行い,自ら考えた上で実験に着手する習慣を会得しました.

(後に社会人になって,人に聞いた方が効率が良いからわからないことは即上司に相談しろと言う人も多くおり,現在ではどちらの考え方も正しいと思っているので,バランスをとることが重要かと思います)

今になって思うことは,研究とは単に周りに話を合わせながら行うようなものではなく,自らの力で考えて組み立てるものであったということです.私はこのことに研究の愉しさを感じています.

また,私の所属研究室にはコアタイムがなく,自身でスケジュール管理をして実験を進める必要がありました.

そのため,自らが己を律さなければならず,人によっては永遠の夏休みと化していた人もいました.

私も(優秀な人たちと比べれば)怠惰な人間なので,研究室配属後に更なる堕落に陥らないか心配していました.

これは完全に杞憂でしたね.

私は卒論・修論共に,心からやりたいと思えるようなテーマだったので,自らの好奇心により日中・深夜問わず,常に研究室に来ていました.

寧ろ,研究室配属後の方が健康的な生活を送れるようになった気さえしています.

現在(R7)の私は社会人として働いていますが,時間的な拘束が多く,なんやかんやでフレックス制の方が合っていたと思う時すらあります.

研究は他の誰でもなく己自身との闘いですので,配属後に伸びる人は伸びますが,堕落する人は全力で堕落します.

私は他人と比べることが嫌なので,己が精神と闘い続けられる研究はまさに至高の環境だと思っています.

とは言いつつ,論文のアクセプト数等は助成金の可否にも関わるため,嫌でも人と比べなければならないシチュは多いですが…,これはどこで働いても同じだと思います.

〇自分の研究テーマに関しては,教授すらも凌駕できる

研究室に配属されて,初めに教授から言われたことを今でも思い出します.

自分の研究テーマに関しては,俺(教授)を超えるつもりで研究に臨め

当時の私は.教授のことをトップクラスのエリート存在と認識しており,超えるとか絶対無理だろ…と思っていました.

しかし,よく考えてみてください.

教授は,複数の研究テーマを掛け持ちしながら,多数の授業を受け持ち,その上に膨大な事務に対応しています.

一方,学生は他に仕事を任されているわけでもなく,1つのテーマにだけ集中できます(就活が膠着する場合を除く).

今となっては,自分の研究テーマですら教授に勝てないのであれば研究などやめちまえ,と寧ろ思っています.

少なくとも学生レベルであれば,研究とはオンリーワンを目指すための努力が全力でできる環境なのです.

研究活動を通じて会得した考え方については,こちらをご覧ください.

〇研究を通じて,アトピーと心の悩みが緩和された

研究を始める前の私は,常に頭の中に黒くて重いもやもやがかかっていた気がします.

喧嘩する両親,祖母の介護,悪化するアトピー…,嫌なことを考えている時間が長かった覚えがあります.

嫌なことを考える度にそれがストレスになり,アトピーが悪化し,更にストレスになる悪循環に陥っていました.

研究室に配属されたのは大学4年のことでしたが,幸運にも私はやりたいと思える研究に出会うことができました.

それからというもの,通学中も,食事中も,寝る前も,常中で研究がうまく行く方法を考えるようになりました.

この頃から家に居る時間も短くなり,嫌なことを考える時間も少なくなったと思います(その分,介護を手伝う時間が短くなり,両親には申し訳なかったですが…).

寧ろ,研究のことを考えている時間は愉しく,次第にストレスはなくなり,アトピーの症状も緩和されていきました.

私はこの経験を通じて,「熱中理論」という人生の法則に気が付きました.

これは,なにかに熱中して余計なことを考える時間とエネルギーを減らせば,心の悩みが緩和されるというものです.

それだけではなく,熱中を通じて己自身に実力がつき,思考も馴化されるために好循環を生み出せます.

因みにですが,熱中する対象としてお勧めな事象に先ほど研究を挙げましたが,創作活動もお勧めです.

創作活動を人生の軸にすることで,様々な事象に目的が生まれ,何事にもやりがいを感じられるようになります.

例えば,昔は博物館や旅行に行くのは他人に合わせる(異性にモテる等)ためであり,正直愉しくなかったです.

しかし,創作活動を始めてからは,博物館や旅行に「ネタ作り」という目的が生じ,今では毎週必ずどこかに出掛けるほどになりました.

このように,研究や創作活動など,嫌なことを考える時間を短くできるようなものを見つけることにより,現状の「耐える人生」から「愉しむ人生」に少しずつ変わっていくかと思います.